裁判には,立証責任というルールがあります。「事実」を,原告と被告のどちらが証明する責任を負うのか(証明できなかった場合,その事実は認定されないことになる)というルールです。基本的には,「請求をする側,訴えた側」が,立証責任を負うことになります。例えば,100万円貸したけれども返してもらえないというケースで裁判を起こした場合,原告が,100万円を被告に貸し付けたこと(100万円を渡して,返してもらう約束をしたこと)を契約書などをもとに証明しなければ,訴えは却下されてしまいます。
では,会社の懲戒事由についてはどうでしょうか。例えば,懲戒解雇をした場合に,元従業員から解雇無効の裁判(地位確認訴訟)を起こされた場合です。
このケースでは,懲戒事由に該当する非違行為の存在を,懲戒権を行使した使用者が証明しなければなりません。そうすると,非違行為を直接証明できる証拠がないようなケースでは,解雇が無効と判断されてしまう恐れがあります。実際,そのような裁判例も存在しています。
懲戒権の行使,特に解雇については,適切・適正な手続を取ることは,後々,解雇無効の紛争とならないために重要ですが,それだけでなくきちんとした証拠,資料に基づいて懲戒処分を決めることも,同じく重要です。
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