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問題社員の対応〜ヒアリングのしかた

1,前回の復習

前回は、いわゆる問題社員への対応のうち,就業規則とコミュニケーションの重要性についてお話ししました。

まずは,従業員に何をしてはいけないかをはっきりと理解してもらう必要があります。そのために,就業規則の中に,「当社では△△を問題行動と考えること,そのような△△の問題行動を起こした場合には,××という制裁があります」と明示しておくことが必要です。

次に,ふだんから従業員としっかりコミュニケーションをしましょう。社長が上司が何を考えているのかをきちんと理解してもらう,そのためには,コミュニケーションが大切です。月1回以上の定期面談を心がけましょう。

信頼関係がないところに,いきなり,あれをやれ,これをしろと言われたら,私たちのことを理解していないのに一方的に指示するだけかと不信感や反発を買ってしまいかねません。人は信頼している人から言われればその人の言うことをきけますが,信頼していない人からの言葉はきけないものです。

さて,今回は,「問題行動」がおこってしまってからの対応についてです。

 

2,問題社員からヒアリング

(1)具体的に何が起こったのか,どのような問題が発生しているのか,そして,その原因は何かを把握すること,その上で対応することが重要です。問題行動の程度にはよりますが,その際に,問題行動を起こした本人からいきなりヒアリングをするのではなく,まずは周囲の社員や上司など関係者から広くヒアリングをすることも考えましょう。できるだけ最初の段階で,客観的な証拠(動画,写真,録音,文書,メール,第三者の証言等)があれば,それを保存しておいてください。というのは,時間が経過すると証拠がなくなってしまうこともありますし,また,問題行動をした社員から,証拠がないなら,そんな行動はした覚えがないと否定されてしまう可能性があるからです。客観的な証拠がないと,やっただろう,やっていないの水掛け論になってしまいます。

なお,最初に問題社員からヒアリングをする目的は,ヒアリングの場で注意や指導をするためではなく,まず事実を客観的に把握するためです。

(2)ヒアリングのポイントは,「傾聴」です。傾聴の目的は「相手が言いたいこと」「相手が伝えたいこと」にポイントを置いて、相手を理解することです。いったんは問題社員の言い分を受け止めてください。

問題行動をした相手に,受け止めたり,傾聴などできないと思う方がおられるかもしれません。

しかし,聴いてみないと物事はわからないものです。もしかすると,個人的に何らかの問題を抱えているためかもしれませんし,実はよく聞けば問題行動の原因が会社側にあり,その問題に対処するために当人が抗議のためにあえて問題行動をとっている可能性もあります。ヒアリングのもう一つの目的は,問題行動を起こした社員がどのような理屈や考えからその問題行動をおこしたのか,その社員の考えや行動のパターンを理解するためです。いったんは問題行動社員の頭のなかに入ってみて,その人がいったいどのように物事をとらえているのか,考えて行動をとったのかを探るという気持ちで臨んでください。

(3)ヒアリングの相手方である問題社員は,感情的になっていることが多いと思います。

そのときに,問題社員から興奮のあまり聞き捨てならない発言が飛び出すかもしれません。しかし,いちいち問題社員の言い分に反応したり,すぐに理詰めで反論してはいけません。そうすると,さらに問題社員が感情的になってしまい,自分の言うことは聞く気がないのか,それなら話さないでおこうということになり,ヒアリングが進まずに逆効果です。相手の発言に反発したい気持ちはわかりますが,途中で,遮ったり,疑ったり,否定してはいけません。

(3)相手からのヒアリングの際に,有効なのは,①うなずきや相づち,と②オウム返しと③要約です。

「うなずきや相づち」は,話を聞きながら,途中で「なるほど」「そうか」「ほう」とうなずきや相づちを入れるだけです。

「オウム返し」は,相手の話のうちで重要なところについて,同じ言葉で繰り返します。

例えば,「私はAだと感じたのです」と話したのを聞いてそれが重要かなと思ったら「そうか,君はAと感じたのか」と繰り返すという具合です。

「要約」は,話の途中や最後で,相手の話をまとめてあげるということです。たとえば「あなたの話しは○○と理解したのだが,それでいいかな」,「ここらでいったん話しを整理してみよう。あなたの話しの要点は○○と○○ということでいいかな」,「あなたの話しのポイントは○○ととらえたが,それでどうだろうか」などです。

最終的には,「あなたは,○○という気持ちや○○という考えから,○○という行動をとったのだね」と言ってあげられるようにしてください。

このような技法を活用することで,ヒアリングされている側も自分の言葉や気持ちや考えが受け止められていると感じ,気持ちが落ち着いてきます。

(4)話をヒアリングしながら,確認したいと思う点が出てくるかもしれません。ヒアリングは,ただ単に問題社員の話をそのまま聞いて鵜呑みにして肯定するということではありません。事実として何があったのかを明らかにする必要があります。疑問があったら,聞いてください。そのときは,「○○と言ったけれども,それは具体的にはどういうことなの?」「○○ということについて,もっと詳しく話してくれないか」と聞いてください。ヒアリングしているときに,問題社員の発言した内容のなかで,一方的で疑わしい箇所について,確認したくなると思います。その際に,遮ったり,疑ったり,否定してはいけません。「ウソだろう」「本当に○○なのか?」と頭から否定しないことです。

 

3,言い分を整理

問題社員からのヒアリングを終えたら,いったん,話していたことを整理しましょう。

整理のしかたですが,5W1H(Who(だれが)When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように))がよいと思います。

問題社員の言い分を時系列に,並べてみましょう。

問題社員の言い分には,客観的事実に一方的な考えや主観的な意見がごちゃごちゃに混じっている可能性があります。それを整理します。

たとえば,ある社員が,「○月○日16時に職場で上司のAさんにきつい口調でパワハラをされた」と言っていたとします。

「○月○日16時に職場で上司のAさんにきつい口調でパワハラをされた」とその社員が受け止めているのはそのとおりでしょう。

そこから,客観的事実と主観的な意見を分けなければなりません。

客観的な事実とは,誰の目から見ても事実であること,実際に起こったことです。

「○月○日16時に職場で上司のAさんにきつい口調」で話しがあったのか,それは客観的な事実といえるでしょうか。

そのようなことがあったことを裏付けるもの(いわゆる証拠)があるでしょうか。そのためには,上司のAさんからも話を聞く必要がありますし,周囲にいたと思われる第三者である社員からも聞き取る必要があるでしょう。このようにして,裏付けるものがあるかどうか,そこから,どのようなことが客観的な出来事があったのかを明らかにしましょう。

このようにしていけば,上司のAさんから社員に対して具体的にどのような話しがあったのかはある程度明らかにできると思います。

次は,その話しかたが「きつい口調」であったかどうかです。きついか口調かどうかは受け止める人の感覚による部分もあると思います。その社員にとってきついと感じたとして,それは一般人からみても,きついとはいえないこともあります。

かりに,きつい口調で話があったとしても,さらに「パワハラ」といえるかどうかは別問題です。

ちなみに,職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

このように,社員の言い分をそのまま鵜呑みにせずに「これは証拠もある客観的な事実」「社員の主観的な意見」と整理していくことは重要です。このようにきちんと整理をしないと,ごちゃごちゃのままの社員の意見に振り回されてしまいかねません。

 

4,対応の決定

得られた情報を整理し,その内容を検討したら,問題社員への対応方法をどうするか考えます。

もし,仮に問題社員の主張していることが,会社への不満や改善要求であり,その不満や改善要求が妥当なものである場合には,会社として改善対応できるものか,できないものかを明らかにします。もし,対応できるものであれば,会社として,いつまでに,どのような状況になれば改善されたといえるかゴールを具体的に設定し,改善をしていきましょう。

そうではなく,もっぱら社員の側に問題があり,その行動を会社として看過することができず正す必要がある場合には,その社員に対して,会社として,どうして欲しいのか,あるべき姿を明示して,改善を求めることになります。

そのときの注意点を申し上げます。

いきなり○○を改善しろと注意指導をするのはできるだけ避けましょう。人間は,心を開かないと,注意指導を受け入れないものです。頭ごなしに,注意指導をすると,いったんは,クビになるのが怖いから聞いたふりをするかもしれませんが,そこまでです。自主的に改善するには至らず,また問題をおこしてしまうおそれがあります。そのため,まず,社員の心を開かせ,問題の意味を考えさせ,自主的に改善してもらう必要があります。

そのために,注意指導をする際に,まず,部下の存在を認めてあげるところからスタートしましょう。最初に,部下のよい点を具体的に褒めてあげる,あるいは頑張っている点を労ってあげてください。

何も褒めるところはないと思うかもしれません。そのような場合でも,探せば何かしらは褒めてあげられるところは一つくらいはあるはずです。何も見つからないというのは上司として部下をきちんと見ていない,観察していないということで上司失格です。

たとえば,結果が出せない部下がいたとしたら目標達成のために努力をしているプロセスを評価して「よくがんばってくれてるね」と労ってあげてください。

その次に,いよいよ本題です。問題行動について,会社として何を期待しているのか,どうすればよいのか,具体的な注意指導をしてください。部下の中には,具体的な行動レベル,手順,そうすることの意味まで示さないと理解できない人もいます。具体的に何をすればよいのか,何をすべきか,してはいけないのか,どんな意味があるのかをはっきりと伝えてください。

たぶん,注意指導をうけたまま面談を終わりにすると,また,心を閉ざしてしまうかもしれません。

そこで,最後に,もう一度,部下のよい点を具体的に褒めてあげる,あるいは頑張っている点を労う言葉を添えて,「君には期待をしているから。やってくれると信じている」と加えてください。

そして,注意指導してそのまま放置してしまうことがあるので気をつけてください。注意や指導をしたら,その注意や指導に対して,部下が「いつまでに」「どのような」行動をするのかをはっきりさせ,また,後日,改善したかをフォローしてください。そのためには,注意や指導をする際に,後日の面談の日程も決めておいたほうがよいと思います。それらは,いずれも記録に残しておきましょう。蛇足ですが,フォローのための面談の際にも,褒める,労うことを忘れないでください。とくに改善が見られたら,「期待していたとおりにやってくれて嬉しい」と伝えましょう。そうすれば,さらに積極的に改善していくでしょう。

 

5,まとめ

今回は,問題社員からのヒアリング,ヒアリングした事実の整理,問題社員への注意指導のしかたについてお話ししました。次回は,この続きで,それでも改善が見られない程度が重い問題社員への対応についてお話ししたいと思います。

 

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