懲戒処分とは、企業が定めた規律や秩序に反した行為を行った従業員に対し、制裁として不利益を課す措置(制裁罰)です。
企業の秩序を維持する上で重要な制度ですが,一方で,労働者にとっては労働契約上の重大な不利益を伴うものですから,懲戒処分は,その内容(懲戒事由・懲戒の種類など)を就業規則に明記することが必要です。
【懲戒処分の根拠】
懲戒処分を行うためには,就業規則の定めがあることが必要です。就業規則に定められていない懲戒の種類について,懲戒処分として行うことはできません。
懲戒処分の主な種類
典型的な懲戒処分には、違反の軽重に応じて主に以下の種類があります。
(1) けん責:口頭または文書で注意・警告を行う懲戒処分のうち最も軽いものです。始末書を提出させたり,注意指導書を交付したりします。
(2) 減給:制裁として賃金の一部を差し引く処分です。ただし、1回の違反につき平均賃金の1日分の半額を超え,一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならないとの規制があります。
(3) 出勤停止:労働者に対し、一定期間の出勤を禁止する処分です。期間は一般的に10日から15日程度とされています。その期間の賃金は支払われないのが原則です。
(4) 懲戒休職:長期間(最大3~6ヶ月程度)の休職を命じる処分で、懲戒処分の一種として規定されている場合があります。
(5) 諭旨解雇:従業員に対し、退職届の提出を勧告し,即時退職を求める処分です。退職金が支給されるなどの配慮がなされる場合があります。
(6) 懲戒解雇:従業員に最も重い不利益を課す処分であり、懲戒として解雇する処分であり,極めて重大な非違行為があった場合に適用されます。
(7) 降格処分/昇給停止:懲戒処分の一種として定められることがあります。
このように、懲戒処分は違反行為の性質や企業の規律維持の重要性に応じて、段階的に整備されることが大切です。
例えば,「戒告・出勤停止・懲戒解雇しか懲戒の種類が定められていない会社において,そこには当てはまらない非違行為が発生してしまった」,「そもそも10人以下の従業員しかおらず就業規則を作成していないが,従業員による重大な非違行為が発生してしまった」などのご相談をお受けすることがあります。
こうした場合に対処に困るケースもありますので,就業規則の整備を常に心がけるようにすることが肝要です。
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