遺言は,法律上の形式が整っていないと無効となります。そのため,遺言内容に不満を持つ側が,遺言の有効性を争う裁判を起こすことは多く,当事務所でも,様々な遺言無効の案件に携わっております。
遺言を自筆で作る際,通常は,その場で全て書き終えると思いますが,今回紹介する令和3年1月18日最高裁判例は,遺言者が入院中に遺言の全文,日付,氏名を自書し,押印だけは,その9日後の退院後に行ったというケースです。
自筆証書遺言は,全ての要件を満たしたときに完成するという考え方を採用すると,押印した時点で遺言書が完成したことになります。そうすると,日付は,9日後の日付を書く必要があり,そのために遺言が無効なのではないかと争いになったのです。
最高裁は,このようなケースでも,直ちに遺言無効になるわけではないと判断し,遺言書の有効性を認めました。
このケースからもわかるように,遺言書の有効性について,様々な点で争いになり,時として数年にもわたる裁判を行わなければならいいこともあるのです。このような紛争にならないように,遺言書を作成する際に,きちんと形式等について専門家のチェックを受けたり,公正証書遺言を作成したりすることで,遺言書の有効性の紛争を防ぐことが可能です。
なお,「遺言書の有効性」について裁判結果が出ても,ゴールではありません。そこを出発点として,ようやく遺産分割や遺留分についての話し合いがスタートします。話し合いがうまくいかなければさらに数年にわたる調停や訴訟になることもあります。
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