メンタル不調の従業員の復職・退職判定

メンタルヘルス不調により,休職している従業員について,復職させるか,それとも退職させるか悩むケースは多いと思います。退職の方向で進めれば,裁判等で争われる可能性があります。一方で,復職の方向で進めれば,以前のような業務には就けず,社内での対応に苦慮する可能性があります。

裁判例をまとめると,復職としなければならないケースは,概ね次のような場合です。

①雇用契約の債務の本旨に従った労働の提供(=もともと予定されていた労働力の提供)が可能であれば,復職となる。

②ただし,まずは簡易な軽作業に従事し,その後ステップアップすることで,以前と同様の労働力の提供が可能になると見込まれる場合も,復職となる。

③職種や業務内容が特定されていない労働契約である場合には,もともとの業務に就くことは難しい場合でも,その能力・経験・企業規模・業種・異動の実情など様々な事情を考慮して,配置転換が可能であり,労働者もそれを申し出ているならば,復職となる。(なお,会社は,配置転換先を,具体的に,可能な限り探す必要があります)

①から③のような状態にあるかどうかの判断は,主治医の診断書に基づいて行うことが多いと思いますが,主治医は,業務内容について熟知しておらず,また患者である従業員の意向に沿った形で診断書を作成することもあります。産業医のいる企業では,産業医の診断書も確認して対応を検討することが可能です。しかし,産業医のいない企業では,担当者において,主治医と面談をして診断内容を確認するなど,具体的に診断書の記載内容について検討し,復職・退職のどちらの方向に進むべきか,慎重に検討をすべきです。

実際に裁判例では,主治医の診断書の信用性に疑問があるとされた事例(例えば,会社で実施したリワークプログラムへの取組みが不十分であるのに,その点を主治医が踏まえずに就労可能との診断書を記載していた事例など)があります。

 

 

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