なぜ,普通の家庭で相続争いが起こるのでしょうか。
その背景には,権利意識の変化があります。
戦前は,親の遺産はすべて長男が相続する「家督相続」でした。いわゆる家意識です。
私自身も,常陸大宮の田舎の出身者ですので,「家」を遺していきたい感覚にはなじみがあります。子どもの頃から,折に触れて,後藤家の歴史について聞かされてきました。
「家督相続」のもとでは,相続争いはおこりにくかったのですが,戦後,個人の尊厳をベースに「男女平等・夫婦平等・子ども平等」という日本国憲法が定められ,それに伴い民法の相続のルールも「家督相続」から「均等相続」へと変わりました。
このようなことにより,個人の権利意識が強くなり,遺産分割において骨肉の争いが増える結果となってしまいました。
脇道にそれますが,「たわけ者」という言葉があります。この「たわけ者」には「田分け」を語源とする説があります。
つまり,その田分けの説は、遺産相続の際、子供の人数で田畑を分けると、孫の代、ひ孫の代へ受け継がれていくうちに、それぞれの持つ面積がだんだんと狭くなります。
すると、少量の収穫となり、いずれ家系は衰退するため、そのような愚かなことをする者を馬鹿にして、「田分け者(たわけ者)」と呼んだというものです。私はこの説を信じて,あちらこちらのセミナーで,照会してきました。しかし,これは間違いだそうです。失礼しました。
実は,たわけ者の「たわけ」は、「ばかげたことをする」「ふざける」などを意味する動詞「戯く(たわく)」の連用形が名詞となった「戯け」で,「戯け者」が語源だそうです。
現代では,以前に当たり前だと思っていた家族観が揺らいでいます。個人をベースに家族とは一人ひとりの個人が集まっているだけとととらえるドライな考え方もありますし,個人を超えた意味を見いだそうという考え方もあります。
家族とは何か,その存在意義が問われています。ただ言えることは,現代において,家族は,放っておくと次第にバラバラになってしまいやすく,関係が希薄化しやすいということです。
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