実は、私は司法試験に合格するまで8年かかりました。
当時の司法試験は、合格率が約2パーセントで、合格までの平均年数は8年くらいでした。
つまり、7回も試験に落ち続けたということです。まさに七転び八起きでした
最初の頃は家族も友人もがんばれと応援してくれていたのですが、4回も連続で落ちると、こいつは、合格できないかもと考え始めたらしく、このまま応援すべきものか、それとも、試験は向いていないからもう止めろと言うべきか考えてくれていたようです。
もし、落ち続けると、どうなるか。多くの司法試験受験生の先輩は、学習塾の講師をするか、警備員などのバイトをしていました。なかには、40歳を過ぎても、受験勉強を続けて、アルバイト生活で暮らしているという先輩もいました。せっかく大学までいったのに、もったいないということで、ダメなら早期に方向転換をした方がましな人生を歩めると考えて、転身を進めてくれるわけです。とくに、盆や正月などの休みに、実家に戻り、親戚と顔を合わせて、どうだ?と聞かれるのが辛かった。それまでは、地元の有名高校を出て、司法試験合格者数でほぼ首位にいた中央大学法学部へ進学したことで、それなりにうぬぼれていたのですが、落ちる度に、プライドが削られ、まるで身ぐるみをはがされていく思いでした。受験地獄というのがあるとすれば、あの時代が地獄でした。悪夢のために飛び起きることが何度もありました。合格して弁護士になってからもしばらくは試験に落ちて親族に言い訳するという夢を見ていました。かなりのトラウマになっていたと思います。さすがにもうすぐ弁護士になって30年なので、試験のことを夢に見ることがなくなりました。
その受験生の頃に、あまりに不合格が続き、これはもうだめだ、精神が崩壊しそうになったことがありました。
このまま試験を続けていく勇気と自信がなくなってしまいました。自分を信じたいのですが、自分を信じる根拠となっていたのは、勉強ができる優秀な自分ということでした。落ち続けて、勉強ができる優秀な自分は木っ端みじんに吹き飛んでしまい、自分を信じる根拠、材料がなくなってしまったのです。もしかしたら、自分は価値がない人間ではないかと考え始めていました。そして、試験を受け続けて合格すればよいのですが、不合格率約98パーセントの試験ですから、いくらがんばっても落ち続ける可能性があるわけで、このまま一生、合格しないということもあり得るわけです。試験を続けて、万一、そのようなことになったときのことを考えました。
不合格のまま人生を終えるとした場合に、私は、受験を続ける選択をしたことを後悔しない、私は私の人生を歩んだのだと笑って言い切れるだろうかと不安になりました。そのころ、どうして合格しないんだとグチを言っていました。だとすると、こんなはずではなかったと運命?を呪いながら、ぐちぐちと一生を後悔しながら生きていくのではないか不安だったのです。
後悔しない生き方をしたい。真剣にそう思いました。
信仰心のかけらもなかったのですが、たまたま書店で見かけた松原泰道師の著書がきっかけとなり、禅寺へ通い、一生懸命に、坐禅をすることになりました。
そのとき、一休さんの言葉「ナルヨウニナル シンパイスルナ」を知りました。
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