ヘルメット着用義務化について

今年4月に道路交通法が改正され、自転車乗車時のヘルメット着用が義務化された。この改正のため、ホームセンターや自転車店ではいっときヘルメットが売り切れた。

道路交通法第六十三条の十一は「自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。」と定めている。この「努めなければならない」という文言は「努力義務」といわれる。

努力義務の場合、違反した際のペナルティはない。したがってヘルメットを被っていなかった場合でも違反切符を切られたり、罰金を取られたりすることはない。

このような努力義務の規定に対して、一般的な義務規定はどうなっているか。

たとえば、道路交通法第六十五条は「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と定めている。この違反には罰則が設けられている(117条の2(酒酔い運転)117条の2の2(酒気帯び運転))。このように、すべての義務規定に罰則がついているかというとそうではない。

調べてみると、義務を定める規定の中には罰則の無いものがある。

例えば、20歳未満の飲酒を禁じる「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」には、飲酒した者自身への罰則規定がない。つまり、法律に「〜ねばらない」と定められていても、違反したら必ず罰せられるわけではない。

なんだ、罰則がないのか、違反しても罰せられることはないのか。

だったら真面目に守らなくてもいいやと考える人もいるかもしれない。しかし、法律まで作ってわざわざ「努めなければならない」としたのにはそれなりに理由がある。ヘルメットなしに事故にあうと頭部に重大な損傷が生じる、そんなことになってほしくない。

ご承知のとおり、この世の中、罰せられなければ何をしてもよいというものではない。

法律が善悪判断の全てもでもない。判断するには法律だけではなく、自己の良心に従うことがとても重要である。