家族信託を使って事業承継を

最近、あちらこちらで家族信託という言葉を見かける。
信託とは何だろうか。
まずは、登場人物を整理しよう。
何かを他人に依頼する人を「委託者」と言い、依頼される人を「受託者」といいう。
そして、委託者と受託者の間で結ばれる契約を「信託契約」と、信託契約によって利益を受ける人を「受益者」という。
受託者は、委託者が指定した受益者のために財産の管理や運用、処分などを行う。
信託契約により、委託者の財産の名義は受託者に変更される。
というものだ。
信託契約によって受託者が利益を得るものを「商業信託」、受託者は利益を得ないものを「民事信託」という。事業承継で使うのは「民事信託」。民事信託は,業として行うことはできないので,実質的には受託者は家族に限られるので,通称「家族信託」とも言われる。
この家族信託が事業承継で用いられることがある
たとえば、
経営者が亡くなってから株式が移転するようにした場合、生きている間は株式は経営者のもとに残ったままとなるため、もし経営者が生前に認知症になってしまうとそのために法律行為、たとえば議決権行使ができなくなり、会社経営ができない困った事態となる。
そこで、信託を利用する
この場合
経営者が「委託者」兼「受益者」
後継者が「受託者」
信託する財産は、株式である。
経営者が元気なうちは、後継者に対して指図権を行使して、議決権を行使させる。
つまり、経営者が元気なうちは、経営者はこれまでどおり経営方針の決定ができる。
そして、受益者として配当を受け取れる。
つまり、現在の経営者の地位は実質的に変更されず、万一、認知症になった場合に備えることができる。
現在のところ、家族信託は、かなりニッチなので、専門家であれば誰でも相談できるというものではない。
家族信託について相談する場合には、その専門家が家族信託について詳しいかどうかを聞いてから依頼すべきである。