日本人は、一般的には,よい子志向で、周りの人にあわせて行動する傾向がある,行動する際の絶対的な基準をもっていない、それゆえ臨機応変,悪く言えば,場当たり的に状況依存の行動をする。一言で言うならば,日本人は,その世間の空気に支配されて行動しているのではないかと言われています。
今回は、人びとの正しさの意識について調査をした結果,何を正しさの基準としているのかで6段階に分けられるという説を紹介いたしました。
もう一度,別の表現でこれを取り上げてみます。
第1段階 偉い人が決めたことには従う。
第2段階 得か損で考える
第3段階 みんながやっていることは正しい,周囲の期待に応える。
第4段階 決まりは決まり。決められたことには従う。
第5段階 皆で決めたことだから正しい。
第6段階 皆が決めただけでは正しいとは言えないが,その内容が人びとの幸福につながるなら正しい。
人びとがこのような正しさの軸をもとにいろいろな物事について判断しているのであれば,この正しさの軸を使って,人びとを説得することも可能です。どこかの有名な学者がそのようなことを言っているわけではありませんが,弁護士としていろいろな交渉の場にいると,交渉に使えると感じることがあります。そこで,今回は「説得の道具」として,どのように使えるのかを紹介したいと思います。
シーンとして,ある人にAではなく,Bの選択をしてもらいたいと考えており,そのために説得をしなければならない状況を仮定しましょう。AやBには皆さんが自分であれこれ具体的に入れてみてください。
第1段階 (その人が権威を感じる人)を想像します。そして,その人がBがいいと言っていると説得します。
例)あの怖い社長がBを勧めると言っていたよ。権威のある弁護士が言っていたよ。
第2段階 Aを選択したら何が損か得か,Bを選択したら何が損か得かを調べて,Bを選択したほうがAを選択するよりも損が少なく,得だよと説得します。
例)Bを選択したほうがAを選択するよりも,金銭的に見ても,時間的に見ても,労力の点から見ても,損が少なく,得だよ。
第3段階 みんながBをやっているのだから正しい,あるいは,Bを選ぶことはみんなの期待に応えることになると説得します。
例)このような場合は,ほとんどの人はBを選ぶんです。みなさんはあなたがBを選択することを期待しています。
第4段階 Bを選ぶのは決まりだから正しいと説得します。
例)これまでの過去の多くの例をみると,Bを選ぶことが慣例となっていましたよ。
第5段階 皆で決めたから正しいと説得します。
例)Bにすることはみんなが決めたことですよ。
第6段階 皆が決めただけでは正しいとは言えないが,そのBの内容がみんなためになるから正しいと説得します。
例)Bを選ぶことは,あなたも含めてみんなにとってよい結果になりますよ。
どうでしょうか。これまで人を説得したことを思い浮かべてみてください。以上に述べたどれかを使っていませんでしたか。
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