相続争いは金持ちだけの家の話しではなく,ごく普通の家庭こそ危ないのです。それは家庭裁判所の統計からも明らかです。
では,相続争いがなぜ起こるのでしょうか。
私の経験からすると,どちらかというと,お金をより多く欲しいという問題ではなく,自分の気持ちが傷つけられた,馬鹿にされた等の感情が原因のことが多いといえます。
赤の他人であれば,そもそも相手に期待していませんので,多少のことを言われても傷つくことはありません。しかし,親族の場合は,相手に対する期待値が高いのです。それゆえ,ほんのちょっとしたことで,裏切られた,馬鹿にされたと感じることが多いのです。
相続の話し合いの際に,注意して欲しいのは,話している内容が正しいかどうかではなく,それを言われた側がどのように受け止めるか,気持ちの問題です。人は,正しいことを言われたら素直に従うというものでもありません。正しいことを言われるということは,相手からすれば,正しくないのだと言われている,つまり,お前は間違っているのだと言われている,追い詰められたのと同じなのです。正しいことを言ったから,逆に感情的になってしまい,何を言っても聞いてくれなくなる,その結果,非難の応酬が始まるということもよくあることです。論理的に正しいかどうかと相手に納得してもらえるかどうかは別だということです。最終的には,相手に納得してもらえなければ,話しはまとまりません。感情的にさせてしまっては,家族の関係性が壊れてしまいます。
とくに高学歴で優秀な人は,論理的に正しければ自分の言い分がとおり,相手は納得するはずだと単純に考えてしまいがちなので,注意が必要です。
経営者の方は,日常のほとんどの場面で,リーダーとして扱われ,そのようにふるまっています。そのため,リーダーとしての行動が要求されていない場面においても,知らず知らずに,上から目線で,ものを語りがちなところがあります。もちろん,「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を実践されておられる経営者も数多くおられますが,家族のことになると,つい,気が緩み,甘えがちです。
「私は○○だから当然に○○だろう」という考え方をしていないかどうか,気をつけていただきたいところです。
あなたのご家族も,実は,あなたに言いたくても言えないことを言わずに我慢していることがあるはずです。それが,あなたの,ちょっとした一言で,我慢していた,言いたいことを押さえていた蓋が吹き飛んでしまい,そっちがそう言うなら,こっちだって言いたいことはいくらでもあるんだ,言わせてもらおうじゃないかとなってしまい,激しい感情のぶつかり合いがおこるのです。そうなると,まさに,骨肉の争いです。
そのようなことにならないように,ふだんから家族とコミュニケーションをとっていきましょう。
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