経営者も健康リスクがある。
60歳を超えると、何があってもおかしくない。
その一つとして、認知症となる可能性も無視できない。
仮に経営者が認知症などにより判断能力を失うと,経営者個人の資産を会社のために使うことも,会社での議決権行使もできない。
万一,判断能力を失った場合に,会社を運営するために新しく代表取締役を選任しなければならないが,そのためには判断能力を失った経営者以外の者が議決権の2分の1以上を持っていなければならない。
つまり,あらかじめ対策をしておかないと,経営者が倒れたために会社も倒産してしまうことがある(実際,あった)。
そこで,経営者の認知症対策はどうすべきか。
よく言われる成年後見制度は財産を減少させないための制度であり,また,専門家が後見人につくので不十分である。
そこで,どうするかだが,まず,経営者の個人の生活のためには,あらかじめ信頼できる家族などを後見人として依頼しておく「任意後見契約」を利用すべきである。
ただし,任意後見の場合,後見監督人がつけられてしまう。後見監督人がどの程度意見をしてくるかが見通せないので,可能であれば,「民事信託」を活用し,株式と事業用財産を後継者に民事信託で託すべきである。
信託であるので,財産を譲渡するのではなく,託すことになる。スムーズな承継が可能となる。信託したら議決権もなくなるのではないかという不安もあるかもしれないが,議決権行使については指図権を設定すればこれまでどおり会社経営が可能となる。
整理しよう
株式と事業用財産→民事信託で後継者に託す。ただし、議決権については指図権を設定する。
受益者は、経営者で生活に困らないようにする。
個人の財産→任意後見で家族にお願いする。
以上は、おもに生前の認知症対策なので、相続発生後のことについてはカバーできない。
それについては、別途遺言などを作成しておかなければならない。
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