経営者の認知症対策としての民事信託

経営者が痴呆になり,判断能力を失うと,法律行為ができない。そのため経営者個人の資産を会社のために使うことも,会社経営において代表取締役として契約もできないし、議決権行使もできない。

万一,経営者が判断能力を失った場合、会社が経営を続けていくためには、新たに役員を選任しなければならないが,それも難しい。

このように痴呆対策をしておかないと,会社経営に支障が出る。

そこで,経営者の痴呆対策を考えなければならない。

判断力をなくした者の財産管理のための制度として、成年後見制度はあるが、これは財産を減少させないための制度であるので会社のために財産を使うことはできない。

また、成年後見人には家族が選任されることが事実上少なく、専門家(弁護士など)が選任される。成年後見制度では不十分である。

そこで,あらかじめ信頼できる家族などを後見人として依頼しておく任意後見契約を勧めたい。

ただし、任意後見の場合には,裁判所が選任した後見監督人がつけられる。後見監督人が任意後見人の決めることにどの程度意見をしてくるかが見通せず、会社経営のために財産を使うことに難色を示す可能性はある。そこで、可能であれば,任意後見に加えて、民事信託を活用することをお勧めしたい。