認知症対策としての家族信託

最近、家族信託について、お問い合わせいただくことがございます。
認知症になると、財産管理ができなくなる、財産が凍結されるという事態が起こります。
その対策として、また、相続対策として、家族信託を利用したいというご相談がございます。
認知症となったら、成年後見制度があるじゃないか、成年後見制度を使えばよいという考えもありますが、実は成年後見制度では、制約があります。
成年後見人となるのは、約8割が専門家(弁護士、司法書士など)です。ご家族が後見人となるのは約2割です。
専門家ですが、やはり他人ですので、他人に財産管理をされるのは抵抗感があるという方がおられます。
成年後見制度は、ご本人の財産を守るという意味では、役立つ制度ではありますが、しかし、認知症となる前と同じようなお金の使い方ができるかというと難しいかもしれません。
たとえば、お孫さんにお小遣いをあげたいなどは、ご本人の財産を減らすことになるので、基本的に許されないと思います。
たとえば、不動産を処分するなども裁判所の許可が必要となり、簡単ではありません。
また、成年後見人には、報酬を支払わなければならず、その金額はけっこうな額になります。
管理する財産の額が1000万〜5000万円だと月額3万〜4万円の報酬がかかると言われています。
1年間で36万円〜48万円。仮に10年間だと、360万円〜480万円。
このようなことから、最近は、任意後見契約や家族信託が成年後見制度をカバーするものとして注目されています。
任意後見契約は、あらかじめ後見人となる人を決めておこうというものです。
家族に後見人になってもらいたい、知り合いに後見人になってもらいたいなどの場合に使います。
家族信託は、将来、財産を処分するなどの可能性がある場合などにかなり使える仕組みです。
このように、生前対策、相続対策として、いろいろな制度があります。
そのため、何をどのように使えばいいのか悩むところでもあります。
そのようなときは、ご相談者様のニーズがもっとも大切ですので、丁寧にお話をうかがうことにしています。
最近、いろいろなところで、家族信託がベストだという宣伝を聞きますが、何でも家族信託で対策してしまおうというのは賛成できません。
成年後見、任意後見、家族信託、さらには遺言などを組み合わせて、もっともご依頼者のご希望をかなえるにふさわしい組み合わせを考えていくべきと思います。